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国内外の英語教育事情
教育研究所のコーナー


  「企業における英語事情」

三井物産株式会社 国際人事室マネージャー兼
物産キャリアパートナーズ株式会社ランゲージセンター所長 定森幸生

「考える英語」から「行動する英語」へ
   最近、「ビジネス最前線で求められる英語」というテーマで講演をする機会が多いのですが、私はいつもその度に、「ビジネス英語とは行動する英語」「考えているだけで使わない英語は世界では評価はゼロ」ということを強調しています。
「行動する英語」とは、ビジネスの現場で交渉相手を前にしたとき、文法、構文、発音やイントネーションの理想形に心を奪われてしまい、相手の心を動かすのに必要な情報や意思の「発信力」が低下してしまう前に、現時点での"自己ベスト"の文法、構文、発音やイントネーションを総動員して、躊躇せずにその場で「英語を使い切る」ことを意味します。もちろん、文章表現力や口頭表現力のレベルアップは、よりよい結果を導き出すためには大切ですが、仮に今は40点の発信力であっても、事と次第では相手の心を動かすことができて、ビジネスが成立する可能性はあります。
逆に、一週間先に80点の英語で発信する自信があっても、今発信しければその場は0点ですからビジネスは成立しません。翌日にはもう別の競争相手がそのビジネスを取ってしまっているでしょう。
 
「通じる英語」から「心を動かす英語」へ
   ビジネスの基本は、「言葉を使って」相手の「心を動か」すこと、すなわち、単に自分の意思が「通じる」だけでなく、自分が相手に期待する行動(買う、売る、出資するなど)を相手が納得して自発的に実行するよう誘導することです。したがって、自分の立場、思い、願いが相手に伝わっただけでは何も起きません。書き言葉、話し言葉をフル活用して相手の立場、思い、願いに有機的に働きかけ、行動を誘発させるパワーが必要です。
「心を動かす英語」のパワーの源泉は、「こと=ビジネスの実態」と「こころ=ビジネスに対する情熱や使命感」「ことば="こと"の大きさと"こころ"の深さを的確に余すところなく表現する力」という3つの要素です。私はkoto、kokoro、kotoba の頭文字をとって、これを「表現力の3K」と呼んでいます。
製品の営業現場を例にとれば、自社の開発・製造部門の仲間たちが長い時間とエネルギーを費やして仕上げた自信作の新製品を、お客様に買って頂いたらきっと満足して頂けるという強い信念と、開発・製造に携わった仲間の努力に対する熱い思いをこめて、新製品がお客様にどれだけ気に入ってもらえるのかを、あらゆる角度から説明し、質問に答え、納得して買って頂ける言葉を厳選することが必要です。
 
ノンネイティブの英語が理解できなければ国際ビジネスはできない
   仕事がら、英語を母国語とする人たちと英語を母国語としない20カ国前後の国の人たたちが一堂に会して討議を行う場に参加する機会が年に何度もありますが、毎回痛感することは、「ノンネイティブの英語が理解できなければ国際ビジネスはできない」ということです。ネイティブの英語を非英語圏の人たちが理解できるのはもちろんですが、さまざまなお国訛りのノンネイティブの英語を、ネイティブはもちろん他のノンネイティブたちがキチンと理解し合っている中で、日本人だけがノンネイティブの英語に苦戦しているのをよく見かけます。
これは、日本では英語学校でも自己学習でも、ネイティブ英語に拘ったリスニングばかりに時間を使い、中国・インドを含めた極東・アジア各国、中東や中南米諸国のビジネスパーソンの英語を"生きた教材"として活用する機会が殆どないからです。今後の世界経済がBRIC(Brazil, Russia, India, China)を中心として展開されるという事実一つをとってみても、これらの国々の人たちの英語を理解できなければ、実り多い国際ビジネスは期待できません。ネイティブ英語のお手本は尊重しながらも、それ以外の英語を理解する許容範囲を広げる努力が、日本人には特に必要だと思います。
539メガヘルツのNHK東京第一放送だけしか聴けないAMラジオよりも、民放各局のAM放送はもちろん、FM放送も短波放送も聴けるマルチバンドのラジオが必要なのです。
 
よく読み、よく語り合い、そしてこまめに書く
   Sir Francis Bacon(ルネッサンス期の英国の随筆家)の有名な言葉に、Reading maketh a full man; conference a ready man; and writing an exact man. というのがあります。旺盛な読書欲は人の知識や心を豊かにし、議論の場を経験することで機敏さが養われ、思考や事実を書き綴ることで正確で信頼性の高い表現力が磨かれるといった意味でしょう。競争優位性が問われる国際ビジネスの最前線で活躍するために、「よく読み、よく語り合い、そしてこまめに書く」ことをバランスよく実行することの重要性は、時代を超えた真理だと思います。Bacon男爵の言葉を21世紀風にアレンジすれば、Reading, conferring, and writing make a well-rounded businessperson.ということになるでしょう。


定森幸生氏写真 【定森幸生(さだもりゆきお)略歴】

神戸市出身。慶応義塾大学経済学部卒業後、三井物産(株)入社。McGill大学(カナダ・モントリオール)大学院修士課程(MBA)修了。米国三井物産ニューヨーク本店人事課、三井物産(株)東京本店人事部能力開発室課長などを経て、現在三井物産(株)国際人事室マネジャー兼物産キャリアパートナーズ(株)ランゲージセンター所長。
1990〜92年文部省学術国際局委嘱による留学生政策に関する調査研究協力者会議専門委員。
1998〜2001年McGill大学大学院修士課程(MBA)非常勤講師(人事管理講座担当)。著作物に「現地社員活用の手引」(日経文庫)、「国際人的資源管理の基礎知識」(産能大学)、「これからの海外人事戦略と要員管理の実務」(労政時報連載)など多数。



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